前回では、自臭症について症状や問題点を取り上げました。さて今回は自臭症について別の角度から見ていきましょう。実際に精神科でどのような治療をしているか、また、自臭症の方への周囲の対応方法など自臭症改善へのアプローチについて迫ります。 A.当クリニックでは、「精神分析療法」という治療を行っています。自由連想法と言って、好きなことを患者さんに話してもらい、その話の中から色々な精神分析療法の技法を用いて、患者さんの人との関わり合いのクセを見出していきます。人間であれば、誰でもが持っているものですが、他人に対して対処する、ないし、対応する際にそれぞれの特徴を持っています。例えば、自分は約束の時間に遅れてきたことがない。でも彼女はよく遅れてくる。しかし、「遅い」とは言えない。もし、そんなことを言って嫌われたらどうしよう、自分が我慢さえすればと思うと益々言えなくなってしまう。などのように自罰的、罪業的傾向があるなどがそれです。 精神分析療法ではそのクセを本人に気づいてもらいます。さらに、クセが判れば、どのように対処すべきかが理解できてきます。理解できれば、症状も楽になり、消失していくのが精神分析療法です。しかし、精神分析療法は、短時間でできるものではありませんので、時間を十分に取り、患者さんといろいろな話をしていきながら進めていきます。ですから患者さんの協力がとても大切なのです。 A.個人差はありますが、半年くらいで気にせず生活できる状態になる可能性が高いですね。そのためにも患者さんには定期的に来院されることをお伝えしています。 A.最も重要なことは、やはり「心の病気かもしれない。一度相談してみよう」と考えていただいて、次に「患者さんに通い続けてもらうこと」です。慎重に時間をかけて精神分析療法を行い、最終的に患者さんに心のクセを理解していただくことが解決となるので、患者さんに来ていただくことが何よりも重要なのです。そのためには、患者さんの治療意欲と協力が必要です。 そして、患者さんに継続して通院してもらうことには、ほんだ歯科提携クリニックのネットワークが大変大きな役割を持っているんですよ。 A.誰でも精神科に初めて行くのは抵抗があるでしょう。自臭症の人は、歯科や内科に行くことはあっても精神科に自ら行くことはほとんどないと思います。常に患者さんの状況を的確に把握され、精神的ケアが必要となった場合は精神科に行くことをアドバイスされる歯科や内科の先生の存在が必要となります。しかし、患者さんに精神科を紹介するには、患者さんと歯科医師との厚い信頼関係がなければ非常に難しいのが現実です。したがって、心のケアが必要であることを理解してもらい、精神科を紹介する制度を整えられているほんだ歯科さんは国内で非常に貴重なネットワークと言えるのではないでしょうか。また、紹介するだけではなく、患者さんが当クリニックに通院されている間も、定期的に提携歯科クリニックの先生がカウンセリングなどでフォローアップされたりしています。　信頼できる歯科の先生と患者さんの関係が安心して精神科に通える大きな力になっています。 自臭症本人は繊細で意志を主張することが少なく、一人だけで悩むことが多いため、自らが自宅で治療を行うことは難しいのが現実。しかし、周囲の接し方で自臭症が改善される可能性があります。喜多先生からお聞きしたある夫婦の実話をもとに考えて見ましょう。 夫は口臭の悩みをずっと抱え込んでおり、最も近い存在である妻にも悩みを打ち明けられないまま何年も生活をしていました。妻は夫が何かにずっと悩んでいることに気付いていますが、相手があまりにも真剣であるあまり何も聞くことができない状態でした。この夫婦が口臭について話す機会ができ、妻に初めて理解してもらったとき、数日間ではあるものの、夫の口臭が消えたのだそうです。そのとき、夫は「口臭が消えるのだ」ということに気づき、口臭を治療することになったそうです。 自臭症の場合は、本人に最も近い存在であればあるほどほど悩みを打ち明けられないことが多いようです。この夫婦のように毎日共に生活しているにも関わらず、口臭に一人で悩み、相手を気にしながら生活するということは想像以上に大変なことでしょう。自臭症者の傾向は、本人から言い出すことが非常に難しいということ。したがって、周りの人は本人一人だけで悩みを抱え込ませず、気楽に打ち明けられるような接し方を心がけることが必要のようです。簡単にできることではないかもしれませんが、まずは相手の心を思いやることが何よりも大切と言えるでしょう。

喜多クリニック 院長：喜多 成价 （きた　しげとも） 先生 昭和47年 関西医科大学卒業。昭和47年、関西医科大学付属病院精神神経科に入局。平成14年、 喜多クリニック開院。平成15年〜、ほんだ歯科提携クリニックとして口臭治療患者の精神的ケアを開始。 喜多クリニック INFORMATION 大阪市中央区石町一丁目一番　天満橋千代田ビル2F 診療時間：月〜金（※木曜日を除く） 午前10:00〜11:00、11:30〜12:30 午後 13:30〜14:30、15:00〜16:00、17:00〜18:00 電話：06-6966-5567 FAX：06-6966-5568 メールアドレス： kita-clinic@alpha.ocn.ne.jp ホームページアドレス： http://www10.ocn.ne.jp/~drkita/